決算書と業績数字の見方

財務諸表、いわゆる決算書と呼ばれるものは、工務店やハウスメーカーが財務状態などを明らかにするために作成される書類のことです。
保有資産と負債、純資産が表形式で示されています。

建設業の許可取得や経営事項審査の際に提出される「決算変更届」のうち、押さえておきたいのは「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」の3つです。

簿記検定や会社の経理に必要ではなく、あくまで家を建てる工務店、ハウスメーカーを選ぶ基準の1つ。
難しいことは考えず、これだけは知りたいと思える範囲で見てみましょう。

貸借対照表

貸借対照表は、決算を迎えた工務店やハウスメーカーの資産、負債、純資産の金額と内訳を示す表のことです。
B/S(バランスシート)とも言われます。

貸借対照表では左側に資産、右側に負債と純資産を記載され、「資産の部」「負債の部」「純資産の部」の3つの部によって構成されています。
資産の部では工務店やハウスメーカーが持つ現金や預金どれくらいあるかがわかります。

資産の部

資産の部での1番のポイントは現金、預金です。

会社を運営するうえで、運転資金がどれくらいあるかはとても重要です。
現金、普通預金、当座預金などがあり、まとめて現金預金とされている勘定科目もあります。

資材などの仕入や外注費、社員の給料など月末の支払いがあり、月商の3か月分程が目安と言われています。
建築中の売掛金や、売上を手形で回収した場合の受取手形も資産です。

土地、建物といった勘定科目があれば自社でビルやモデルハウス、もしくは収益物件を持っているかもしれません。
これだけでも資金面に余裕があるかどうかがわかります。

ただし、貸付金といった資産なのに回収不能となっている不良債権もあります。
これは、お金を貸してと言われた貸したけれど、いつまでたっても返してくれない、それどころか連絡がとれなくなってしまったというような場合と似ています。

回収が可能か不可能か、あまりにも多い貸付金がないかなど、気をつけておく必要があります。

負債の部

負債の部での1番のポイントはその名の通り負債がどれくらあるかです。

売掛金とは逆の支払いが決まっている買掛金や支払手形のような勘定科目が資産を上回っていれば問題です。
給料より支払いが多くて生活ができないようなものです。

負債の勘定科目には借入金、未払金、預り金、未払消費税や未払法人税などがあります。

借入金には決算日の翌日から1年以内に返済期限がくる短期借入金、返済期限が1年以上のものを指す長期の借入金があります。
借入金がない、つまり借金のない経営は「経営状態が安定している」と評価することができますが、金融機関との取引実績がないともいえます。

売掛金の回収が間に合わずに黒字倒産に陥ったり、新型コロナウイルスやウクライナ問題といった緊急時にお金を借りられないデメリットもあります。

一般的に、借入金は月商の3か月以内であれば借入余力があると判断され、3か月~6か月以上であれば借入金が多いと判断されます。

純資産の部

純資産の部では、工務店やハウスメーカーが保有する資産から負債を差し引いたものです。

会社を設立した際の資本金や、資本金として計上しない資本準備金などがありますが、ここでは難しいことを考える必要はありません。
重要なのは、これまでの営業活動により、税金や配当金を差し引いた利益が累積された利益剰余金です。
利益剰余金の中には任意積立金、別途積立金、繰越利益剰余金があります。

これらすべてを合計した純資産が、貸借対照表の負債の部と純資産の部を合計した総資本に占める割合がどれだけあるかを示すのが自己資本比率と言います。

自己資本比率は30%以上がひとつの目安とされています。
30%を下回ると自己資本比率が低いともいえ、債務超過による経営悪化や倒産のリスクがあります。

損益計算書

損益計算書は工務店やハウスメーカーの売上や利益だけでなく、かかる経費の大まかな内訳を見ることができます。
P/L(ピーエル)とも言われます。

1年間の売上高、売上原価を差し引いた総利益、販管費(販売費及び一般管理費)などの経費を引いた営業利益、本業以外におけるその他の損益も含めた経常利益、法人税や住民税などを差し引い当期利益を見ることができます。

営業利益が赤字の場合、最終的には黒字でも本業における利益はないと言えます。

利益は少なくても、販管費の内訳では役員報酬や従業員給料手当といった人件費、TVCMやチラシなどにかかった広告宣伝費、接待交際費などが高額といった場合もあります。

株主資本等変動計算書

株主資本等変動計算書は、貸借対照表の純資産の部の変動を表す書類です。
株主資本の変動の様子を一覧にしたもので、株主資本が増加、もしくは減少した原因や項目をあらわしています。

ここで見るのは「剰余金の配当」です。

株主資本等変動計算書に記載されている剰余金の配当とは、期中に株主に支払った金額、つまり「配当金」です。これは、会社が蓄積している利益の一部を株主に還元することで、株主資本の減少を意味します。

前期の当期利益分が純資産に計上されていない場合、剰余金の配当があったと考えられます。

社長とオーナーが違う場合、損益計算書では黒字でも無理な配当で純資産が減ってしまい、結果資金ショートに陥る場合もあります。